受任通知の効果
金融機関、貸金業者、債権回収業者が受任通知を受け取った場合、(貸金業法第21条1項9号)、法律上、債務者への取立てや支払いの督促が禁止されます。
したがって、債権者が金融機関や貸金業者、債権回収業者の場合には、債務者への直接の連絡がストップすることになります。弁護士が介入するまでは債権者から執拗な連絡があった場合でも、受任通知により、そういった連絡を止めさせ、生活の平穏を取り戻すことが期待できます。これは受任通知の大きなメリットといえます。
一方で、債権者が個人などの場合には、法律上、債務者への取立てなどが禁止されるわけではなく、直接の連絡が止まないこともあります。もっとも、弁護士から受任通知を送ることにより、その後、債務者に対する直接の連絡が止み、弁護士に対して連絡するようになるケースが多いといえます。
また、受任通知発送後は、債務者から各債権者への返済を一旦ストップすることになります(個人再生の場合の住宅ローンの支払いを除く)。
受任通知の記載事項
一般的に、受任通知には以下のような事項を記載します。
- 債務者の氏名、住所、生年月日などの特定情報
- 弁護士が代理人となって債務整理の手続きを行うこと
- 今後の連絡はすべて弁護士に対してすること
- 債務者に対して一切、取り立てを行わないこと
- 取引履歴などの開示を求めること
- この通知は時効中断事由である債務の承認には該当しないこと
受任通知を送る場合の注意点
「ブラックリスト」に登録される
債務整理を行う旨の受任通知を貸金業者等が受け取ると、債務整理に関する情報が事故情報として「ブラックリスト」に登録されます。もっとも、既に延滞している場合などは、そのことが事故情報として既に「ブラックリスト」に登録されている可能性もあります。
金融機関の口座が凍結される
金融機関(銀行など)に対して受任通知を送った場合、債務者がその金融機関において保有している口座が凍結され、入出金ができなくなります。また、その口座の残高と負債とが相殺されます。
口座の凍結が解除されるまでに、通常、1~3か月程度の期間を要します。金融機関が借金を回収しきれない場合には、保証会社による代位弁済が行われ、その後、口座の凍結が解除されますが、代位弁済までにかかる時間が事案によって異なります。
そのため、金融機関から借入れがあり、その金融機関の口座が給与の振込先口座になっている場合や、その口座から公共料金等の引落しがなされている場合には、受任通知を送る前に、振込先の変更や引落し口座の変更の手続きをするなど、その口座を使わない状態にしておく必要があります。
クレジットカード決済が利用できなくなる
受任通知を送った債権者のクレジットカードが利用できなくなります。そのため、公共料金、通信料などの支払いをクレジットカード決済で行っている場合、請求書によるコンビニ払いに変更してもらうなど、支払い方法を自分で変更する必要があります。
連帯保証人への請求が予想される
借金の連帯保証人がいる場合、受任通知を送ることにより、その連帯保証人が債権者から請求を受けることが予想されます。
強制執行を止める効果はない
金融業者等が受任通知を受け取った場合、債務者への直接の請求をすることはできなくなりますが、訴訟を提起することや、差押えなどの強制執行をすることは禁止されません。
そのため、既に訴訟を提起されている場合や、給与や預金口座の差押えを受けている場合には、事案によっては、速やかに自己破産の申立てを行うことを検討すべきといえます。